特定口座は個人で損益計算を都度計算することなく、証券会社がすべて行ってくれる便利な口座です。特定口座の中でも、源泉徴収ありを選ぶと譲渡益が出るたびに20.315%(所得税15.315、住民税5)の税金が源泉徴収(差し引かれる)されて口座に入金されます。それでは、譲渡損が出た場合はどうなるのでしょうか。
(※この記事では手数料分の計算を全て省略します。)
特定口座(源泉徴収あり)の場合
既に証券会社の方に源泉徴収としての税の預かり分がありますので、その額を限度に税金分が還付されます。例えば、10,000円の譲渡益(売却益)があって以前に2,031円が源泉徴収されている場合、ある時に10,000円の譲渡損が出た場合は、2,031円が還付(加算)されて口座に入金されます。これを年度内損益通算と言います。
具体的にはこんな感じです。
受渡日 | 銘柄 | 購入金額 | 売却金額 | 譲渡損益 | 源泉徴収 | 入出金額 | 口座残高 |
¥1,000,000 | |||||||
3月X日 | A | ¥300,000 | ¥-300,000 | ¥700,000 | |||
4月X日 | A | ¥310,000 | ¥10,000 | ¥2,031 | ¥307,969 | ¥1,007,969 | |
6月X日 | B | ¥200,000 | ¥-200,000 | ¥807,969 | |||
7月X日 | B | ¥190,000 | ¥-10,000 | ¥-2,031 | ¥192,031 | ¥1,000,000 |
注意点は以下のとおりです。
- 譲渡損が出た取引より前に譲渡益がなければ(源泉徴収されていなければ)還付されない
- 年を跨いでの損益通算はない
- 還付されるのは源泉徴収されている税金の範囲内(例の場合、10,000円を超える部分の売却損があっても、2,031円までしか還付されない)
特定口座(源泉徴収なし)の場合
特定口座で源泉徴収なしを選択している場合、売却価格分(譲渡価格)がそのまま入金されます。単純でわかりやすいですが、年間で利益が出た場合は必ず確定申告で納税します。
受渡日 | 銘柄 | 購入金額 | 売却金額 | 譲渡損益 | 源泉徴収 | 入出金額 | 口座残高 |
¥1,000,000 | |||||||
3月X日 | A | ¥300,000 | ¥-300,000 | ¥700,000 | |||
4月X日 | A | ¥310,000 | ¥10,000 | ¥310,000 | ¥1,010,000 | ||
6月X日 | B | ¥200,000 | ¥-200,000 | ¥810,000 | |||
7月X日 | B | ¥190,000 | ¥-10,000 | ¥190,000 | ¥1,000,000 |
最後に
特定口座内で行われる損益通算は年度内のみ有効です。前の年に利益が出ていて源泉徴収されていても、次の年の損益で還付されることはありません。また、複数の証券会社で特定口座を持っていても、計算上は証券会社ごとに計算されるため、例えばA証券での損失とB証券での利益を相殺したい場合は、確定申告をする必要があります。特定口座の場合、年間取引報告書が翌年1月に通常発行されるので、それを利用して簡単な確定申告を行い、税金の払い過ぎを防ぎたいものです。